-眼球丿時代-
あるいは予測されるヒトの終演について

 

影のユメを見たことがありますか?

貴方の踝に纏わりつくあの影のことです。

私はある午後微睡んでいて

薄皮一枚の眠りの向こう側にいて

すっかり熱くなった

電灯の下に手を翳していました。

どういうわけで電灯の下に手を入れていたのかは

覚えていませんが

手の下ですっかり

ヌルくなっていた水の入ったガラスコップに

私の手の影ができていなかったのです。

電灯のヒカリは私の手をまるで無いもののように素通りして

ガラスコップのなかの

水をぼんやりと暖め続けていたのです。

その時に初めて夢の中での影のありようというものに

気がついたのですが

考えてみれば夢の中で影を見たことがありませんでした。

友人達に訊いてみたものの

影のユメを見たと断言しきれる者は殆ど

いません。

ごく僅かな確信者達も

どういうわけか見た当時

脅迫観念にとりつかれて逃げ回っていたとか、

世界から切り離されたと思い込み

自己確立丿為と称して

かなり強いクスリを常用していたようなヤツばかりでした。

果たして

どうしてそういうことになるのか

影のユメとある種の脅迫概念やら自己喪失性との間に

なんらかの因果律でも存在するのか?

このことは結局私からはなれることはありませんでした

 

 

  

 

 


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