畜骸のなかのサーカス
(circus in a carcass.)

 
 

 

 

それは道路の端の背の高い草に隠れていたり、澱んだ中州だらけの川べりのどこかに打ち捨てられた畜骸だった。

 

 

 

 

 

 

 

 























































































 

 

 

 

 

 

なんだかお前はすっかり痩せこけちまって、剥き出しのあばらの中はすっからかんでさ、もう蛆がたかることもできないくらいからっぽの抜け殻なんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 












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骨をすり潰して白粉にしよう。

 

赤や緑に干涸びた内臓はそのまま泥水で溶いて顔や唇に塗ろう。

 

あばらから糸屑のような神経がはみ出した脊椎にロープを張って色とりどりの万国旗をつるそう。

 

すっからかんの胃袋に水を張って飛び跳ねる羽虫に曲芸を覚えさせよう。

 

其れ故死骸は馬でなければならない。

 

足を折ったまま放置され朽ち果てた荷役のつまらない馬だ。

 

名前すらなかったから誰に呼ばれることもなくそのまま干涸びたのだ。

 

 

 

 

 

長い戦争がやっと終わってくだらない死骸になってはじめて近くの子供達が見つけたのだがつまらなくてもう誰も見向きもしない。

 

月がたまに降りて来てその辺の瓦礫を照らしたがそれでもそのサーカスを見に来たわけではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 










 

 

 

 

 

 

 

サーカスはガラスに熱がこびりつくような夜にたまにはじまるがそれに必要な観客はいつもいなかった。

 

それでもオレは顔を赤や緑に塗りたくって白くだんだらに塗られたステージに立つんだよ。

 

火を吹くような炎天の下で破れた傘を広げてわらわらとステップを踏もう

 

どうでもいいリズムで世界を見限ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





































































 

 

 

 

 

 

 

でもなんのことはない

 

それは昨日までのオレとおまえだな。

 

 

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